日本を滅ぼす教育論議
岡本薫
講談社現代新書
756円
「日本を滅ぼす」とはすごいタイトルだ。おそらく最近の教育論議ブームをにらんで編集者がつけたものだろう。中身は日本人論の観点から教育論議の数々を批判したもの。日本人独特の思考スタイルが、いかに教育論議を不毛のものにしているかということを説いている。
著者はOECD研究員、文化庁課長、文部科学省課長などを歴任した人。現在は政策研究大学院大学の教授。文部科学省を離れて、やっと好きなことをバンバン言えるようになったという開放感が行間から感じられる。
さて付箋紙を貼った箇所からピックアップ。
「ゆとり教育」について。
そもそも「詰め込み教育」への反省からゆとり教育を導入したのに、学習内容も授業時間数も一緒に削ってしまった。これだと「学ぶ量÷時間」はたいして変わらない。もし詰め込み教育を改めたいのなら、「授業時間はそのままで学ぶ量を減らす」もしくは「学ぶ量はそのままで授業時間を増やす」かのいずれかを選択しなければならなかった。
なるほど。僕は頭が悪いのでこんな簡単なことに気づかなかった。現在、文部科学省は「ゆとり教育」への反省から、2007年度までに学習指導要領を改訂するといっているが、この場合は「学ぶ量も増やす。授業時間はさらに増やす」というのが真っ当だろう。しかし週休二日を維持したままでどうやって授業時間を増やすのか。もし授業時間は現状のままで学習内容を増やせば、塾通いをしている子どもとそうでない子との格差は広がるばかりだ。そもそも現在の学習内容は本当にいけないのか、いけないならどのレベルをもって到達目標とするのか、そこの議論がなされないままに再び学習指導要領が変えられようとしている。こうした「おかしさ」を本書は次々に指摘し、批判していくのだが。
それから「心の教育」について。
心の教育とは何なのか? 一方では「個性化」「多様化」を標榜しつつも、教育をもって子どもたちの「心」をひとつのありように導こうとするのは間違っているのではないかと著者は書く。子どもたちに徹底するべきは何よりも「ルールを守る」こと。それ以外の心の教育は、「内心」の問題に大人の側の思想を押しつけるものだ、と。
家庭においても同様で、まず大切なのは「各家庭のルール」を明確にし、それを守らせる(親も守る)ということだろう。日本の家庭で「ルール」を明確化しているケースは少ないと思う。わが家もそうだ。なかには両親は反対しているのに祖父母がソフトを買い与えるのでゲームをやめさせられない、なんて話もある。家庭での教育、学校での教育、ともに僕たち日本人の心理や行動様式にまで深く入り込んで考えていく必要があると感じた本だ。