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脳内汚染

脳内汚染
岡田尊司
文芸春秋
1600円

前々から薄々感じていたこと、しかし自らの後ろめたさと、もはや社会が取り返しのつかないところまで来てしまっているのではないかという恐ろしさから心に閉じこめていたことが、ここにすべて明かされている。端的に書くと、脳科学者で、現在は京都医療少年院の臨床医である著者が、脳科学の立場から、そして問題行動(犯罪)を犯した少年たちと接してきた経験から、また多くの社会調査データから、テレビやビデオやインターネットの映像コンテンツが、そしてテレビゲームが、子どもたちの脳を汚染し、不登校や、ひきこもりや、いじめや、ニートや、さらには凶悪犯罪へと駆り立てているという仮説を証明しようと試みた本だ。
先ほど「うしろめたさ」と書いたのは、子どもたちにそうした環境や道具(テレビ、ビデオ、パソコン、そしてゲーム機)を買い与え、「家事をしなければならないお母さんにとっても、とても便利なお守り役であるため」に放置してきたのは僕たち親の責任であるからだ。僕の家でも同様だった。みなさんも心当たりがあるだろう。最初はかたくなにゲーム機を買い与えなかったのに、ある日とうとう折れた日のことを。ゲームをしないと友だちから疎外されるから、という言い訳を自らに与えて。それはとりもなおさず本書の言う、「子どもにLSDやマリファナをクリスマス・プレゼントとして贈る」に変わらないことだっかかも知れないのに。
アメリカでは、志願者不足を解消するために、 高度な戦争シミュレーションゲームを軍が若者に無料配布しているという。同種のシミュレーションゲームで神経を麻痺させられた兵士が、イラク戦争で多くの兵士や民間人を殺戮する事に躊躇・動揺することがなかったという「成果」から始められたことらしい。僕も含めて子どもの脳を鍛えることに熱心な現在の日本。それだけではいけないのだと心から思う。


追記/2006年2月23日号の週刊文春の書評欄で、宮崎哲弥氏が本書を「社会調査データの信頼性に関する検討が乏しく、危うい推論の積み重ねに終始している」とコメントしている。ならばアメリカ軍に「無駄なことはおやめなさい」とアドバイスしてはいかがか。